大使挨拶:メレンゲと観光のカリブの島に数学博物館!?

 
   在ドミニカ共和国日本大使館のホームページを訪問頂き、ありがとうございます。

 私はドミニカ共和国に来て、もう2年になります。これまで日本とこの国の貿易不均衡を是正するために、この国への投資誘致やこの国の産物や製品の日本への輸出を増やすために、日本企業の方々に色々相談して来ましたが、日本から非常に遠いということもあってか、なかなか上手くいきません。是非、日本の企業の方々にこの国に関心をもって頂きたいと思っておりますので、宜しくお願い致します。
 この国には外国企業にとって税制面等でメリットが多くなるようなフリーゾーンが沢山あります。現在日本企業としてはワコール1社のみがありますが、非常に良い先例だと思います。サント・ドミンゴの国際空港横のフリーゾーンで約27年間、約3000人の従業員を使ってアンダーウェアー等を生産しています。この国が米国、欧州諸国等と自由貿易協定を結んでいること、南北米大陸と欧州との交差点に位置していること、手の器用な比較的質の高い労働力があること等から順調に経営が進み、今後更に生産能力を拡充して行くようです。是非、他の日本の企業の皆さんにもこの国に投資して頂ければと思います。大使館も全面的に協力して参ります。 
 さて、昨年から今年にかけて大使館が手掛けた色々な業務の中で、特に二つの事業に触れたいと思います。
一つ目は、この国の持続的な発展のために、国の最大の強みである観光を更に強化するための協力を行っていること。二つ目は、ラ米諸国共通の課題である教育の振興、特に、AIやデジタル社会を念頭においた数学・サイエンスの強化のための協力の実施です。

 ・観光強化への協力
観光協力については、JICAによる一村一品運動等の他、特に600万人(2011年)の外国人観光客数から2400万人(2016年)へと5年間で4倍にまで伸ばした日本の観光努力を、ドミニカ共和国に伝えるための講演会を積極的に実施してきました。私自身の講演では足らない部分は、JICAの協力も得て日本から観光と食文化に詳しく、1988年に創刊された雑誌「HANAKO」の生みの親でもあり、現在流行仕掛人として知られている島田始氏を講師に招き、講演会、テレビ出演、新聞インタビューなどと積極的に活動して頂きました。主なメッセージは、「この国の強みの発見、その強みを顧客の嗜好に合わせて商品化する、具体的には、ドミニカ共和国の強みである美しい海と太陽だけでなく、メレンゲとかバチャータの踊りと音楽、野球、美味しいコーヒーとカカオ、バナナやアボガド等を使ったトロピカルなカリブ料理を、現地の文化として具体的に質高く作り上げ、この国まで足を運ばないと体験したり味わえないものにする努力の必要性」を、より具体的な形で色々教えて頂きました。(詳細はこちら)

・数学・サイエンス強化への協力
 数学サイエンス・プロジェクトは、2015年9月、私が在バルセロナ総領事の時に東京理科大学の秋山仁先生に勧められて行った数学博物館を見てから始まりました。これまで私は約30年間ラ米諸国に勤務していますが、何時も、音楽、踊り、美味しい食べ物等により毎日楽しく暮らせるのは有難いが、何故ラ米には国家財政の柱となる付加価値を高めるための産業が少ないのか、何故貧富の格差やら汚職事件等が後を絶たないのかと、ずっと疑問に思っていました。そんな中、この数学博物館に何回か足を運ぶ中、沢山の子供から大人までが楽しそうに数学の教具を触ったり動かしたりしながら、ピタゴラスの定理等の数学の公理を体験学習している姿をみて、この方法ならラ米の子供達の数学への関心を惹きつけることが出来ると確信しました。また、単に解を求める知識優先の数学のみではなく、特に論理的思考を司る左脳等の訓練のための数学の振興により、国民の個々の生活、社会全体の習慣、国の制度等の改革の他、既に到来したAIとデジタル社会に向けた貢献も出来るのではないか、と考えました。
 2016年9月にドミニカ共和国に赴任し、10月20日にメディーナ大統領に信任状を奉呈した時、STE(A)M教育(STEAM:Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)、数学と科学の重要性について意見交換をしました。その後セデーニョ副大統領に呼ばれ、先方の依頼をうけて数学博物館の開設についても話をしました。2017年2月からは高等教育省次官と一緒に、数学博物館創設に向けて各大学の数学教授、JICA青年協力隊、ドミニカ人JICA元研修生による委員会を立ち上げました。
 2016年12月には秋山先生から感動的なメールが届きました。PISAの国際試験結果を見たようで、「牧内さん、ドミニカ共和国は74の参加国のうち残念ながら最下位だった。どうだろう。この順位を数年後に60位、50位と上げるために一緒に頑張らないか」との提案でした。それから秋山先生はご自身で70個の数学教具を製作して船便で送ってくれました。2017年11月29日にはサント・ドミンゴ旧市街の通信博物館に、秋山先生の講演を皮切りに東京理科大と同じ数学体験館をオープンしました。今は、市内の各大学の大学院生約30名のグループを組織し、数学体験館の説明員としての育成を行っています。ずいぶんと反響を呼んでおり、連日小中高校の課外授業の児童・生徒約300名が来館し、週末には全国の数学教員グループの研修先ともなっています。皆さんご存知のように、1492年にコロンブスは最初の航海でサント・ドミンゴに到着しました。この数学博物館もここサント・ドミンゴから広く中南米大陸に広がることを切に願っています。(詳細はこちら)

2018年4月1日  牧内博幸